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戦後民主主義の横広がりを

2021/7/25(日)

 

「至誠・勤勉」「分度と推譲」-子供のころに習った二宮尊徳の報徳運動。その遠州地方の拠点だった磐田市見付(地脇町)の中遠報徳館で、大日本報徳社(掛川市)の鷲山恭彦社長を招いた集いが開かれました。

 鷲山社長は旧小笠郡土方村出身で東京学芸大の元学長。祖父、父とも報徳運動の推進者で、元掛川市長の故榛村純一氏の後を受け2018年から社長を務めています。

 戦後日本に根付いたはずの民主主義と個人主義が、いつの間にか自分主義に堕してしまい、隣人とのきずなは薄れ、世は黙過と無関心、ジコチューがまん延…。

 新型コロナの感染爆発にも減らない“人流”に自由主義の不効率を嘆き、都市封鎖の強権発動ができる法改正を、はたまた「戦前の方が良かった?」という声さえ聞かれる昨今(自分も含め)。戦後76年の営為は平和主義ともども、もはや風前の灯火です(ここまではすべて筆者の私見)。

 

 鷲山さんは、3年前の社長就任のあいさつに、こう記しています。「戦後民主主義をさらに深め、発展させていく―その道は個人の自由の民主主義から、人と人との新しい結びつきの民主主義への深化でしょう。共同と連帯の、より深い民主主義への発展です」

 今の時代に、それがどんなプロセスで可能なのかは正直、分かりません。手あかのついた社会主義でもないでしょう。ただ、「このダイナミズムを支える合言葉こそが『すべてのものには徳がある』でしょう」と現代社会に向かって言い切る報徳運動の、歴史の試練に耐えた人間への洞察と思想の底力には大いに期待したいと思うのです。